| そういえば去年のちょうど今頃、食と暮らしまわりのスタイリスト・大谷マキさんの葉山のお家におじゃました。
その日は大谷さんのお部屋でファッションの撮影だったっけ。
壁と床が板張りだから陽の光が部屋中にあかーく反射していて、「今日はゆっくり撮ろう」そんな気持ちにしてくれるあたたかいお部屋だった。
煎れたてのコーヒーをいただきながら、板張りの壁にかけられているものをついじーっと見てしまった。
干し柿・・・。
竹をさいて作られた棒に柿がさされていて、何段かになって糸で吊るされている。
大谷さん「毎年かかさず年越しは三重県の田舎に帰るんですけど、そこは伊勢のちっちゃな村で、親戚みんなで集まっておばあちゃん家で餅つきをやるんです。そのお餅と一緒に、おばあちゃんがその年に作った干し柿を蔵から大事そうに出してきてくれるんです。“今年もうまくできたよ”って。」
長野「壁にかけられているこのかんじが、かわいいですよね。」
大谷さん「ホントはこの干し柿は鏡餅のために使うんです。おばあちゃん家でついたお餅を二段重ねにして、その上に棒にささったままの干し柿を1本のせて、更にその上にみかんをのっける。それが我が家の鏡餅。」
長野「大谷さんが小さな頃から、この干し柿は毎年おばあちゃんの家で作られてきたんですか。」
大谷さん「はい。実家からすこし離れたところにおばあちゃんのお庭があるんです。そこに柿の木があって、みかんやら、ぶどうやら、いろんなものを作っているんです。秋になると毎年、家族や親戚のおじちゃんらとみんなでしぶ柿を穫りにいって、おばあちゃん家の軒下でみんなで並んで干し柿にするんです。軒先の裏にそれをバーっと吊るすとオレンジのカーテンみたいになる。」
長野「大谷さんのおばあちゃんってどんな人ですか。」
大谷さん「とにかくかわいいんです。収穫した柿が少ないときは竹の棒ではなくて、細いワラに3つくらいの柿をとおして、わっかに結んだものになるんです。ちょっとした機転が利くんですね。ワラの干し柿もかわいいですよ。料理や裁縫以外にも、おばあちゃん独自の知恵をたくさん教わりました。あと働き者なんです。お庭の手入れから家のことまで、一年中ひとりでやっている。毎年ちゃんと柿がなるのも、おばあちゃんがお庭の手入れを夏にきちんとやっているからだろうし。
毎日やり続けていることが、いつも変わらないなにかを生み出している。そんなことが大事だということも、おばあちゃんから教わったのかな。」
長野「干し柿を壁にかけてるってことは、おばあちゃんや伊勢の田舎を忘れないためなんでしょうね。」
大谷さん「本当だったらこの干し柿だって、冷蔵庫に入れておいたほうが長持ちするんです。でもかわいいからこうやって壁にかけてる。もともと私、甘いもの好きじゃないし・・・。でも干し柿は別。そういえば干し柿って天ぷらにするとおいしいですよ。」
長野「天ぷら?! あ、確かに。おいしそうー!」
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